「とりあえずお邪魔します」
明るい茶色の髪がふわふわと僕の目の前を通り過ぎ、扉を開けてリビングに入る。
「ちょ……ちょっと!」
「お食事中でしたね。どうぞ続けて下さい」
小さなダイニングテーブルの上にある、のり弁とビールを見て彼女は僕に声をかけた。
「私に構わずどうぞ」
そして誘導。
構わずって言われても
とりあえず座ったけど視線が痛い。
彼女はのり弁をガン見していた。
怖いくらいの視線。
僕がのり弁なら、死んだふりするぐらいの鋭い視線。
お腹空いてる?
「あ、食べる?」そう聞くと
「とんでもありませんっ!このスズメごときが、亀山さんのお食事を奪うなんて」って首をブンブン横に振って100%否定するけど、彼女のお腹はグゥと鳴る。
絶対
お腹空いてる顔。
「いいよこれ食べて。僕はパンもあるし」
見ず知らずの女の子の前にのり弁を差し出すと
女の子の顔はパァーっと明るくなり目を輝かす。
「ありがとうございます。あいかわらず亀山さんは優しくて嬉しいです」
あいかわらず?どこかで会ってる?
「食べ終わったらお話しますね」
女の子は嬉しそうに割り箸を取り「いただきます」って手を合わせ、すんごい勢いでのり弁を食べ始めた。
食事を狙った泥棒か?