「洗い終わったら食後のコーヒーを用意しますね」
テキパキと食器を片づけ
洗い物をするスズメ。
「僕もやるよ」
彼女の横に並ぶと
「とんでもないっ!」って怒り出し
一生懸命、僕の身体を両手で押してソファに座らせる。
「ご主人様は座っていて下さい」
ドヤ顔で僕に言う。
小柄なくせに
上から目線のドヤ顔が似合ってる。
「それが終わったら、少し話があるんだけど」
遠慮がちに彼女の背中に声をかけると
それこそ猫に狙われたスズメのようにビクリと身体が動いた。
料理上手で良い子かもしれないけれど
追い出さなきゃ。
どうやって
円満に出て行ってもらおうか。
目を閉じて悩んでいると
台所から懐かしい音楽が響いてくる。
どこか優しく懐かしく
温かくて
ライナスの毛布のように
包んでくれる音楽。
スズメが歌ってる。
僕はソファの背を枕に身を沈める。
スズメの歌声は催眠術
あぁ
どこで聴いたのだろうその曲。
僕はその歌を知っている
遠い昔
まだ僕が楽しく家族と笑っていた
幸せな時代に
僕は聴いている。