「ご主人様が恋しくなったら、この子達を抱いてここに来るんです」
「これも探したな。雀の寝床になってないかって」
僕は亀のぬいぐるみを手にして笑った。
「ネックレスはごめんなさい。高価なので婚約者のオーナーに没収されたら困るから着けてません」
オーナーが婚約者?
あのいじわるな顔した僕より年上の?
鈴芽の運命の人?
「嫉妬されるから?」
さりげなく聞くと
「違います。お金になるから取られるだけです」って笑われた。
何か違う気がする。
彼女はその婚約者で幸せになれるのだろうか。
「鈴芽」
「はい」
「僕は君にいつも言われてる通り、ヘタレで根性がなくて、人を愛する事に自信がなかった。さよならが怖いからペットも飼えず、人と関わるのも怖くて……最初から失う物がなければ、寂しい想いをしなくていいって思ってた」
鈴芽は黙って僕の言葉を聞いている。
「でも鈴芽と出会って僕は変わった。鈴芽を手放したくない。僕は鈴芽が大好きなんだ。鈴芽が必要なんだ」
彼女の目から涙がこぼれる。
「婚約者の事が好きで、鈴芽が幸せになれるなら僕はもういいんだ。僕の気持ちを伝えたくて」
「ご主人様……」
「僕がどれくらい君を好きで、大切にしているか……わかってほしい」
オレンジ色の夕陽が僕達を照らし
僕は鈴芽の唇に自分の唇をそっと重ねる。