宿が三ヶ月間の休業に入る。

狭苦しいホテルをリニューアルして
もっともっと女性客を呼び
もっともっと稼ごうとしている。

だから私はオーナー母子の前に土下座して
一生に一度のお願いをする。

「三ヶ月の休みが欲しい?あぁ?ふざけんな!」
事務所の安っぽい灰皿が頭に飛んできた。

「調子こいてんじゃないよ。リニューアルの間にやる事はいっぱいあるんだ」

思った通りの言葉。

「三ヶ月間だけでいいんです。一生のお願いです。戻ってきたら何でもやります。一生の奴隷でかまいません」

奴隷は言いすぎたかな。
でも、そのぐらい言わないと許してもらえない。

この母子の考えはわかってる
私がそのまま逃げ出して、戻らないのを心配してるんだ。

うん。このまま逃げ出したいんだけど。

あまりにもしつこく粘るので、条件を出された。

「いいよ。お前も休みもなかったし、三ヶ月後にはうちに嫁に来る運命だから。そのかわり、戻らなかったら調理場の奴らを全員解雇するからね」

いじわるな母親の方が私に言う。
そうきたか性悪魔女め。

優しい調理場のみんながクビになる。
ありえない。
みんな家族もいるし生活もかかってる。

これは逃げ出せない。
絶対無理。