慣れない電車に乗る時は動きが遅くなり、見逃してしまいそうになったけど、どうにかストーカーのようにお兄ちゃんの後ろを歩いて三階建てのマンションに到着。
ジッとそのまま外で待ってると
三階の一番端の電気が点いた。
あそこの部屋か。
お兄ちゃんはあそこに居る。
胸の中が熱くなり
涙がボロボロこぼれて
気持ちが小学一年の夏に戻る。
私はあの時が一番幸せだった。
優しいお兄ちゃんが唯一の希望だった。
お兄ちゃんは幸せなのだろうか。
結婚してるのかな
綺麗な恋人がいるのかな。
小説家の夢はどうなったのだろう
まだ小説を書いているのかな。
ふと人の気配があって、ゴミ捨て場の陰に隠れる。
後ろから私より年上の若い男女が歩いてきた。
「ねぇここのマンション良くない?駅とコンビニも近いわよ、高いのかな?」
「あ、ここはダメ。単身者用だから」
そんな会話が耳に残る。
単身者用マンションなんだ。お兄ちゃんは独身だ。
「にゃーぉ」
足元でゴソゴソ小さな物が動いてネコが鳴く。
もう、驚かさないで。
ホッと一息ついてから
猫を見て
またマンションの灯りを見上げた。
やるしかない。