広い部署の人達が部屋の中央に集まり、前方には部長と課長と常務とスーツ姿の女性が立っていた。

「今日からみんなと一緒に働く、木之内玲奈(きのうち れな)さんだ」
常務が言い
彼女は一歩進んで僕達に頭を下げる。

背筋がピーンとしている女性だな……って思った。
姿勢が良くて
細くて
黒のスーツが似合ってる。
高級ブランドのスーツだろう。

長い髪を首の後ろで一つにまとめた姿が、彫の深い綺麗な顔立ちを上品にしている。

課長が彼女の経歴を言う。
なんかすごい大学を出て、総合商社で使える資格を持ち、帰国子女感たっぷりの女性。

圧倒されそう。

「俺、合コンやめてこっちがいいな」
中岡が僕に言うけど
これはさすがの中岡でも難しいのではなかろうか。

「初めまして。木之内玲奈です。よろしくお願いいたします」
堂々と木之内さんは僕達に挨拶をする。

「噂されるのが嫌なので自分から言いますが、私はここの会社の社長の娘です。それは気にしないで同じ働く仲間として扱って下さい」

木之内さんはそう言った。

え?社長の娘。御令嬢ってやつ?

みんなの緊張が大きくなる。

いきなり同じ部署に社長のご令嬢。
うわ。どうすりゃいい?

「ぜってー狙う」

僕の戸惑いとは正反対に中岡は燃えていた。