料理だけが希望。
それ以外は望んではいけない。
身を粉にして働いてた日。
調理場の材料が足りなくなり
急きょ
町はずれの道の駅に新鮮な野菜を買いに行ったら
意外な人物と出会った。
着物姿の上品なおばあさん。
まちがいない。
昔より年老いて小さくなったけど、あれはお兄ちゃんのおばあさん。
私はフラフラとおばあさんの前に行くと、おばあさんは不思議そうに首を傾げた。
「おばあさん。あの、スズメと言います。昔なんですけど亀山宏斗お兄ちゃんと、仲良くさせてもらいました。その、病院で入院していて……」
あまりにも突然の再開でしどろもどろになっていると、おばあさんは笑顔を見せる。
「あぁスズメちゃんね。いつも宏斗と遊んでくれていた女の子。まぁ大きく綺麗になって」
自分の名前が印象的で助かった。
おばあさんはすぐ思い出してくれて、懐かしそうに話を弾ませた。
最後まで私を加害者の娘と知らずに終わってる。
ごめんね、おばあさん。
あぁ笑った顔がお兄ちゃんに似ている。
「さよならも言わないで退院して、ごめんなさいね。あの後は大変で、宏斗もすぐに私の息子の家に引っ越したの」
「あの、お兄ちゃんは……今はどこに居ますか?」
「大学から都会に出てね、年に一回のお墓参りで出てくるかしら。名刺があるはず」