それから
私はずっと働いた。
行く場所も逃げる場所もなかった。

高校も行かせてもらえず
ずっとずっと働いた。

後から
私の父親のせいで
お兄ちゃんの家族が亡くなったと知って、大きなショックを受けた。

加害者の娘が被害者に甘えていたなんて、とんでもない話で笑えないよね。

引き取ってくれた宿のオーナー親子は、ケチでいじわるだったけど
従業員の人達は優しい人達ばかりで
私は下働きを何でもしたけど、調理場でよく働いた。

「あんたの料理が評判だから、あんたは朝の早くから夜の遅くまで調理場で料理をしな」
オーナーであるおばさんに命令され、私は調理場で包丁を握る。
料理は楽しく
沢山色んな事を吸収する。

「鈴芽ちゃんは才能あるわ」
何のとりえのない自分だけど、そう言われると嬉しくなる。

休みがなくて仕事が忙しいと泣きたくなるけど
そんな時は、お兄ちゃんから教えてもらった子守唄を海岸で歌う。

お兄ちゃんの優しさを、今も覚えてる。

私は20歳の誕生日に
次期オーナーになる男の嫁になる。15歳も年上の男。私に選択権はない。

「初夜まで手を付けないでおくから、お前も他の男とヤルなよ。処女のまま俺に抱かれろ。初めてじゃなかったらその場で半殺しだからな」

大丈夫です。処女です。