お兄ちゃんが車イスからツエになったから
ゆっくりゆっくり
おくじょうまでいっしょに上がった。

「うわっ本当だ。海が綺麗だね」

まぶしそうにお兄ちゃんがいうから
「鈴芽のいったとおりでしょ」って、わたしはジマンする。

「うん。えらいえらい」
また頭をグリグリなでられた。うれしい。

「ちょっと落ち込んでたから、元気がでるかな」

「お兄ちゃん。元気なかったの?」

「うん。離れてる家族にすごく会いたくて、寂しかった」

そうか。
わたしはお父さんに毎日あってるけど、お兄ちゃんはあえないんだよね。

「でもね。ここに入院したから鈴芽ちゃんに会えた」

お兄ちゃんはニッコリわらう。

「鈴芽もお兄ちゃんにあえて、うれしかったよ」

「ありがとう。出会いって不思議だよね。よくお母さんが言ってた『出会えてありがとう』って」

「ありがとうなの?」

「うん。お父さんに会えてありがとう。僕とお兄ちゃんに会えてありがとう……なんだって。それをエンっていうんだよ」

むずかしいおはなしだけど
わたしはお兄ちゃんにあえて、ありがとうっておもうよ。

「早く退院したいなぁ。海に行きたいなぁ。鈴芽ちゃん、今度さ貝殻拾ってきてくれる?」

「貝?」

「そう白い貝殻。触って海の気分になりたい」