「お兄ちゃんが子守唄を歌ってあげるから、目を閉じて」
「おうた?」
「うん。お母さんがよく眠れない時に歌ってくれた。だから目を閉じて」
わたしは目をとじて
お兄ちゃんのおうたをきく。
それは
やさしくて
あったかいきもちになれる曲。
アクビがでるよ
わたしはねむたくなった。
おやすみなさい。
「宏斗君ありがとうね。この子はかわいそうな子なの。母親が育児放棄して頼りの父親も重症で」
「鈴芽ちゃんのお父さんは病気なんですか?」
「えーっと……そうね。うん病気」
「小さいのにかわいそう。僕は大好きな家族がいるけど、鈴芽ちゃんは大好きなお父さんだけが頼りなんだ」
「だから宏斗君が面倒みてくれて、私達も喜んでる」
「僕も妹が欲しかったから、鈴芽ちゃんは可愛くて好きですよ」
お兄ちゃんはわたしがすきなの?
わたしといっしょだね
わたしもお兄ちゃんが大すき。
とってもやさしいおうただね。
わたしもおぼえよう。
おぼえてお父さんにきかせてあげよう。