「だから早く元気になって、退院して家族に会いたい。僕はお母さんもお父さんもお兄ちゃんも大好きで、こんなに離れた事がなくて、ちょっと寂しい。でもガマンしなきゃね。もう6年生だもの」

えらいなぁお兄ちゃん。

「スズメちゃんは兄弟はいる?」

「いないよ」

「そっか。僕は中学生のお兄ちゃんがいるんだ。走るのがとっても速くてね、秋の大会に出る予定だけど大丈夫か心配なんだ。たまにケンカするけどゲームも得意でさ、早くお兄ちゃんと会ってゲームとケンカしたいな」

「ケンカしたいってヘンだね」

「……そうだね」

お兄ちゃんはわらった。
お兄ちゃんがわらうと
なんか私もうれしくなった。

「宏斗」
うしろからこえがして
クルッとみたら
着物すがたのおばあさんが立っていた。

「おばあちゃん」
お兄ちゃんがそういうと、おばあさんはうなずいてわたしをみた。

「スズメちゃんだよ。同じ小学校の一年生なんだって。お父さんが入院しているんだって」
お兄ちゃんがせつめいすると

「あらあらそうなの。可愛らしいお名前ね。ここは大人ばかりだから宏斗と仲良くしてあげてね。洗濯物を持ってきたから一回お部屋にもどりましょうか」

「そうだね。じゃぁねスズメちゃん。201だからね」
お兄ちゃんはおばあちゃんに車イスをおされて行ってしまった。

「お母さんといつ話ができるの?おばあちゃんの携帯貸してくれる?」

「あっちの精密検査が終わるまで待つ約束でしょう。もう少し待ちなさい」

「電話ぐらいいいでしょう。精密検査が長いなんてそんなに悪いの?」

「違うけど、事故が事故だから保険会社も絡んでいて面倒なの。だからもう少し我慢しなさい」

「……はい」

「宏斗はえらいね。宏斗が元気になってくれるのが、今のおばあちゃんの生きがいなんだよ」

「大げさだなぁ、って泣かないでよおばあちゃん。どうしたの?大げさだなぁ」


お兄ちゃんとおばあちゃんのおはなしがきこえる。

お兄ちゃんの家族はなかよしでうらやましい。