いっぱい走ってたら
ドーンって
かたいのにぶつかって、わたしはころんでしまった。
いたかったよ。
「ごめんね大丈夫?ケガしなかった?」
車イスにのったお兄ちゃんが、しんぱいそうにわたしをみる。
お兄ちゃんは手をのばしてパンパンって、わたしのふくのホコリをとってくれた。
「廊下は走っちゃダメだよ。いくつ?」
とってもやさしそうなお兄ちゃん。
足にケガをしたんだね。
あとは小さなばんそこうをあっちこっちにはってる。
ジーッとお兄ちゃんをみていたら
「僕は元気だけど、足首を折ったんだ。君は病気?」
「鈴芽は元気だよ」
「スズメ?スズメちゃんっていうの?飛べそうな名前だね」
お兄ちゃんはわたしの名前をきいてわらった。
しつれいだね。
「あ、怒った。ごめんね。ごめんごめん。可愛い名前だったからさ」
プイってあっちをむいたら
お母さんが見えた。
お父さんが目をさましたからびょういんにきたんだ。
お母さんがコワくてお兄ちゃんの後ろにかくれたら、お兄ちゃんはまたしんぱいそうに
「スズメちゃん時間ある?何か飲まない?あっちに行こうか」っていってくれた。
だから私は
お兄ちゃんの車イスをおしながら
ジュースと本がならんでいるばしょにお兄ちゃんと行く。
今日はだれもいなかった。
「今日は貸し切りだね。スズメちゃんは何を飲む?」
お兄ちゃんは小さな黒い財布を出した。
わたしはお金をもってないから、のめないよ。
「カルピス嫌い?」
お兄ちゃんがそういうから
「大すきだよ。スズメはカルピスが大すきだよ」って大きなこえでおへんじをする。
「僕もだよ」って
お兄ちゃんはカルピスを2本かって「はい」って1本わたしにくれた。
その時のお兄ちゃんのわらったかおは
とっても
とっても
とっても優しくて
鈴芽は会ったばかりだけど
お兄ちゃんが大すきになった。