駐車場まで息を切らして走り
中岡の車を見つけた所で胸のスマホが震えた。

誰だろう
知らない電話番号だ。

僕は電話を取り
少し会話をしてから
中岡の車に乗り故郷の海へと向かう。

頭の中の霧は完璧に晴れた。

運転しながら
忘れていた想い出をひとつひとつ思い出し、涙を拭きながらハンドルを握る。

泣きたいのはスズメの方なのに

ごめん。

都会を抜け
海岸線を走り
あれ以来
来た事のない故郷に入る。

僕はまっすぐ海へと向かう。

あの宿のすぐ裏にある
よく遊んだ海岸へと

海は穏やかでキラキラしている
砂浜に革靴を沈ませながら
僕は水平線をジッと見つめる女の子に近づく。

女の子は体育座りで
ひとりぽつんと砂の上に座る。

そうだ
この子はいつもひとりぼっち。

カメとラッコのぬいぐるみを抱き
遠くを見つめてから
近寄る僕に気付き
少しだけ目を大きくする。

「これ、約束を守ってくれてありがとう」

僕はポケットから貝殻を出し
スズメ見せると
スズメは笑って「思い出しました?」って僕に言う。