「いや違う。僕は着替えて仕事に行くから、今日は必ず出て行って!」
「まだ私達は始まったばかりですよ」
そんなベタなドラマみたいなセリフは止めてくれ。
僕は時計を見ながら立ち上がって部屋で着替え
彼女を無視して玄関に向かうと
「ご主人様。これ飲んで下さいっ」
「えっ?」
顔を上げると無理やり口に錠剤を入れられた。
「黒酢サプリです。疲れがとれます」
自信満々に言われてしまった。
サプリいらない。
「ご主人様。これもです口を開けて」
命令口調で言われ
つい靴をはきながら口を開くと
喉にぬるりと液体が流れて
吐きそうな口当たりに唾液が上がる。
「これなに?」
涙目で彼女が持ってるグラスの水を取り上げて一気飲み。
一気飲みしてもまだ泣けてくるほど口の中がヌメヌメ。
「エゴマオイルです。テレビでやってました」
この健康オタクめ!
僕は逃げるように玄関を出て階段で一気にマンションの入口から飛び出すと
「ご主人様。いってらっしゃいませー!」
ピンクのエプロン姿で三階のベランダからお見送り。
静かなる住宅地に響く彼女の元気な声。
周りを歩く人達が僕と彼女に注目している。
絶対!
追い出す!
エゴマオイルはもういらないっ!