スズメが映ってる。
調理場の人達に囲まれて
とても楽しい顔で料理をしている。
シェフと調理場の人達。
もう一度
震える指に気合を入れて
海の景色をジッと見る。
この海をずっと見ていた。
子供の頃
遊んでいたんじゃなくて
違う場所の窓で見ていた。
消毒液の匂いがする場所で
僕は車イスに乗って
ずっと窓の外を見ていたんだ。
面会謝絶の札を病室に下げ
友達とも家族とも会えず
寂しい日々だったけど
その中での
温かい優しい想い出。
スーツの胸ポケットから白い貝殻を二つ取り出し、テーブルの上に置く。
白い貝殻
約束
あの時の約束。
あぁそうだ。
思い出した。
僕は全てを思い出す。
封印していた
あの夏の想い出を。