「ご主人様も座ります?」

座っているベランダの柵を軽く叩いて僕を誘うけど、僕は首を強く横にした。

僕が近寄ると雀たちは名残惜しそうに飛び立ち、彼女はそれを目で追い「またね」と言う。

ちょ、ちょっと
そのまま追って背中から落ちるなよ。

「ゆっくりでいいから、静か―にこっちに来てもらえる?」
見守りながら彼女に指示すると「はーい」と元気に返事してストンと降りる。

まったく心臓に悪い。

そのまま足早に洗面所へ向かう途中
足が止まる

【ご主人様を幸せにするbyスズメ】
去年ボーナスで買った高級スピーカーの上に色紙が飾られていた。

適当に崩れた字がまた腹立たしい。

今度は乱暴に洗面所から出て来ると
テーブルの上からいい香りが漂う。

「朝食は軽くおにぎりとミネストローネにしました」

細かく刻んだ野菜が栄養たっぷり
温かいミネストローネはどこかのホテルの味に似ている。

そして食べやすい小さなおにぎり。
具は梅と鮭と塩こんぶ。

美味しい。
悔しいけど美味しい。

女の子はニコニコしながら僕が食べる様子を見ていた。
自分が食べるより
僕が食べる様子を見るのが嬉しい雰囲気。

「美味しいですか?」

「うん。すごく……」って彼女のペースになってる!