しばらくパソコンの画面を見て
僕は黙り込む。

「ご主人様」不安そうな声を出し、スズメは閉じた目をゆっくり開いて画面を見ると

「ごしゅじんさまぁ」

泣くのが早すぎ。

「奇跡だ。こんな最終に残ったのは初めて」

編集部からメールが届き
僕の作品は最終審査に残ってしまった。
驚きで言葉も出ない。

「おめでとうございます」

スズメは僕の背中にまた抱きつき号泣。

「おめでとうございます。本当に嬉しいです。昔からの夢が叶いますよ」

「まだ決まったわけじゃないから」
うん。
だって他の4作品が凄いのばかり残ってる。
最終まで残っただけでも奇跡だよ。

「うれしいよぅ」

「大げさだって」

背中に手を回してスズメを背負う形になりながら、この背中の温かさを失いたくないと思ってしまう。

けど

それはスズメを苦しめる。

『好きな人には、笑っていて欲しい』

そうだね木之内さん。その通りだ。

「ねぇスズメ。今度の土曜日さ休日出勤しないから水族館へ行かないか?」

「水族館?」
背中でスズメは泣き止んだ。