それは、強さは皆同じじゃないということを教えてくれているのだろう。
それぞれに、いろんな形で前に進む。
中には私のように、進むことを諦めかける人間もいる。
けどそんな私を、新太は笑ったり見捨てたりしない。
「距離は短くたっていい。足を止めてしまってもいい。だから苦しくてどうにもならない時は、一回水面に浮いて、泳ぐことを休むんだよ」
休んでも、私がまた泳ぎ出せると、信じてくれている。
息継ぎひとつでも、短い距離でも、些細なことをともに喜んでくれる。
その言葉をただ黙って聞く私に、その目はそっと細められた。
「人にうとまれ生きていくのは、つらいよね。痛いよ。だけど、この世界には願ったって生きられない人もたくさんいる。その人たちにとって明日がくるのは当たり前じゃない……奇跡に近い日もある」
当たり前に目が覚めて、当たり前に息をする。そんな朝は、皆に平等に訪れるわけじゃない。
望んでも生きられない人、突然命を失う人。
私が憂鬱に思う朝も、その人にとっては奇跡の朝かもしれない。
「だから、生きてやろうよ。これでもかってくらい生きて、楽しいこともいやなことも経験して、全部自分の糧にしてやろう」
それが、新太が私に伝えたいと思ってくれていた
生きる、理由。