昨日も新太は、お昼に手早くチャーハンを、夜にはバランスよく野菜と肉を使った炒め物を……と料理を作ってくれた。
『料理、好きなんだよね』と言うだけあって、毎回きちんと自炊をしているらしい。
まるで主婦だ……。
感心するように思いながら、そろそろごはんを食べようか、と14時過ぎの時計を見ていると、どこからかカリカリ、と音がした。
「ん……?」
縁側のほうを見れば、締め切った戸の外側で、トラが『中に入れて』とでもいうように小さな手で戸をひっかいている。
「お前は……どこから出たの」
『ニャァァ~』
猫独自のルートから庭へ出たはいいけれど、入れなくなってしまったのだろう。
あきれながら戸を開ければ、トラは素早く室内へと入った。
この猫は、1日中家のあちこちをウロウロとしている。
けど庭に出ても敷地の外には出ないそうで、新太いわく『えらいっていうか、ビビりなんだよねぇ』とのこと。
するとトラはなにげなしにこちらに寄ってきて、私の足へすり寄った。
「わっ、なに、踏んじゃうって」
小さな体を踏んでしまっては大変だ、と咄嗟によける。
けれどそれを遊んでいると思ったのか、足元で八の字を描くようにうろうろと歩いてじゃれるトラが、ちょっとかわいい。