「俺も実家はもうちょっと都内寄りでさ。大学通うのに近いからってここに住むことにしたんだけど、3ヶ月前にじいちゃんが亡くなって、それからひとりで暮らしてるんだよね」



言いながら新太が箸を持ったままの右手で指さすのは、私たちがいる居間から戸で仕切られた隣にある和室の部屋。

開いたままの戸の奥には仏壇があり、そこには数名の写真が飾られているのが遠目に見えた。

きっとそのなかの1枚が、新太のおじいちゃんのものなのだと思う。



そうだったんだ。おじいちゃんが、亡くなって……。

なんと言えばいいか分からず言葉を詰まらせてしまう。けれど新太は全く気にする様子もない。



「これだけ広い家だもん。女の子ひとりくらい何日か泊めても全然平気ってこと」

「あ、だから……」



そっか、だから私を泊めてくれたんだ。

家の古さも、大学生のひとり暮らしに不似合いなこの広さも、その話で納得できた。



なにか裏があるんじゃないかと疑っていた心も、『そういうことなら』とやっと少し安心して、少し湯気のおさまったみそ汁をひと口飲んだ。



「俺のことより、なぎさについて聞いてもいい?なぎさはいくつ?」

「……17。高校2年」

「高2かぁ!いいねぇ、今が一番楽しい年頃じゃない」



新太は自分の過去を思い出しているのか、懐かしむように笑う。