「わっ、ちょっ、なに」
「早坂家の毎朝恒例!ラジオ体操の時間だからね!」
「は、はぁ!?」
ラジオ体操!?
意味わかんないんだけど!
こちらの困惑などお構いなしに、新太は廊下のつきあたりにある縁側から外へ連れ出す。
置かれていたサンダルを適当に履き、少し広めの庭に出た。
そして新太が縁側に置いてあるスマホを操作すると、チャーンチャーラチャンチャラチャ、とあの有名なラジオ体操の曲が流れ出した。
「まずは背伸びの運動!」
「はぁ?やるわけ……」
「はいっ、いち、にー!さん、しー!」
寝癖すらもそのままに、その場に立ち尽くす私の前で、ジャージの袖をまくった新太は腕を振り上げ伸ばし、元気よくラジオ体操を始める。
なにこの人……ついていけない。
顔はそこそこイケメンで、背も高くて、優しそうな雰囲気もいい感じなのに。
それらをぶち壊すようなバカみたいな明るさで、いい笑顔でラジオ体操をするその姿に引いてしまい、私はうんざりとした顔をする。
するとそんな私の態度を見かねて、新太は「もう!」と後ろから私の腕を掴むと同じように動かした。
「ちょ、ちょと!やめてよ!」
「はいっ、いち、にー!さん、し!」
嫌がり跳ね除けようとするけれど、私より20センチは大きいだろう背に、力強い手をする新太相手では、バタバタとするだけで逃げられない。