それからは、慌ただしい日々だった。

周囲への連絡や葬儀の準備など、悲しみにくれる暇もないほどバタバタと動くうちに毎日が過ぎて行った。



そしてじいちゃんの葬式が終わり、誰もいなくなった居間を見た時、ようやく実感が込み上げた。



ひとりに、なった。

じいちゃんは、もういない。

その現実は、俺により孤独や悲しみ、絶望を突きつけた。



朝起きて、居間にじいちゃんがいる。

ラジオ体操をして、朝食を食べて、『気をつけてな』と送り出してくれる。

帰ったら笑顔で出迎えて、夕食を食べながらその日の出来事の話を聞いてくれて。



そんな当たり前の景色がないのに、『いつも』の日々が訪れる。

俺にとってはいつもの景色なんかじゃないのに。

それが当然かのように、日は昇り、暮れ、星は輝く。なにも変わることはない。



それに従うように、俺も日常へと戻って行った。

けれど、普通に大学に行って、普通に生活をして、その中で時折不意に心が闇にのまれそうになる。



授業をさぼって、ひと気のない別館で階段に座ってぼんやりとしていることも増えた。



『早坂』



そんな俺に声をかけてくれたのが、深津先生だった。