仕方がない、わけがない。

いつか死ぬなんてそんなことわかってるよ。けど、だからって、なんで今なんだよ。

なんで今、なんでこれからって時に。

なんで、なんで、なんで



『嫌だ、嫌だ……じいちゃんが死んだら、嫌だ』

『……いつまでも泣き虫な孫で困るなぁ』



なにもできず、そう泣いて、じいちゃんを困らせることしか出来なかった。


一緒に過ごすこと以外なにも出来ないまま毎日が過ぎ、3ヶ月が経った頃、その日はあっという間にやってきた。



ピー……と鳴る、無機質な機械の音を聞きながら、目を閉じたじいちゃんの手を、そっと握った。

痩せた手は、ほんのすこしなまぬるくて、けど段々と冷えていくのを感じた。



涙は、出なかった。

今この瞬間を現実として受け入れることができなくて、夢のようにも思えていたから。

ふと目を覚ましたら全て元通りで、じいちゃんとトラと過ごす日常があるんじゃないかって。



だから、いかないで。ここにいて、もう一度笑ってよ。

叶わないとわかっていても、何度も何度も、心の中で繰り返して。