そんな矢先、それは今年の6月の夜だった。



『ニャー……ニャァー……』

『なんだよトラ……こんな時間に。お腹でも空いた?』



雨の降る音が窓の外に響く中、深夜2時にトラの声で起こされた俺は、渋々台所へと向かった。

ところが、そこにあったのは台所で倒れたじいちゃんの姿。



『じいちゃん!?ねぇ!しっかりしてよ!!』



意識を失っているのか、声をかけてもじいちゃんは反応してくれない。

そんなじいちゃんに俺はパニック状態になって、上手く言葉もまとまらないまま救急車を呼び、そのまま病院へ向かった。



その時は幸い一命を取りとめたけれど、そこで医師から告げられたのは、聞きたくない現実だった。



じいちゃんの心臓がもうもたないということ。

命の残りは、あと3ヶ月ほどしかないこと。

年齢や体力から見て、治療は難しく、限界があること。



『人はいつか死ぬもんさ。しかたない』



意識を取り戻したじいちゃんは、前から薄々分かっていたのかもしれない。悲しむ様子も見せずに笑っていた。

けどそんなこと言われたって、受け入れられるはずがない。