俺じゃないと言っても、信じてもらえない。

助けた男子も、本当のことを言ってさっきの奴にやり返されるのがいやだったのだろう。『早坂くんにやられました』と簡単に頷いた。



誰も俺だと信じて疑わない。誰も俺を信じてくれない。

これまでの自分の行いを見せつけられた気がした。



自業自得。その言葉が、一番しっくりくる。



その事態に、これまで電話で注意を受けるだけだった親も呼び出され、校長室で深く頭を下げていた。



『本当に申し訳ありませんでした。……新太、なにか言うことはないの?』

『……俺じゃない。俺は、やってない』



きっと母親は、俺に自ら謝るように言ったのだと思う。けれどそれとは逆に否定をした俺に、母は少し黙って、俺を平手でたたいた。



『他人様に迷惑かけて謝ることもできないの!?本当に……なんなのよあんたは!!』



簡単に信じてもらえるとは思わなかった。

けれど、あまりにも迷いなく疑う母に、なんだかおかしくて笑った。



信じてもらえるわけなんてなかった。他人より俺のことを知らない人間が、他人が疑うことを『そんなことない』と否定してくれるわけがなかった。

だけどそれでも、ほんの少し期待をしていた。

信じてくれるんじゃないかと、夢を見ていた。



そんな自分が情けなくて、笑いが止まらなかった。