そんなある日、中学3年の初めだった。



『おい、金出せよ』



校内で、恐喝されている同級生をみかけた。

メガネをかけた、いかにも大人しそうな、隣のクラスの男子。

別に他人が恐喝されようとかまわないと思う気持ちもあるけれど、弱い者いじめは、嫌いだ。

そんな気持ちから俺はその男子を庇った。



『ちょっと。なにしてんの?』

『げっ、早坂……』

『その財布、こいつのじゃないの?』



俺の追及に、恐喝をしていたそいつは1対1でやるのはバツが悪いと思ったのか、すぐに俺に財布を投げて逃げて行った。



『は、早坂くん…』

『はい。財布』



ところが、そのタイミングでその場に駆けつけてきたのは担任教師だった。



『おい、なにしてるんだ!早坂!』

『はぁ?』

『生徒が恐喝にあってると聞いて駆けつけてみれば……やっぱりお前か!』



俺と同じように見かけた誰かが呼んできたのだろう。その曖昧な説明と今の状況では、どう見ても俺が恐喝した側だ。



『俺じゃない!恐喝してたのは他のやつでっ……』

『言い訳をするな!!これまでは見逃してきたが……なんの非もない生徒に手を出したとすればもう許せないぞ!!』