すると、キーンと高い音がして、続けて大きな咳ばらいが聞こえた。
「じゃー、フォークダンス始めまーす。輪になってー」
拡声器を通して、先生が言った。
座り込んでいた生徒たちは、その声を合図に立ち上がり、炎を囲み始める。
「柊、ここ、ここ」
呼ばれて振り向くと、みどりが自分の左隣を指差していたから、そこに入った。
みどりの右隣には達郎、その隣には由香が、当たり前のようにいる。てっきりみどりは由香の隣に入るのかと思っていたけど、どうやら違ったようだ。
その理由を聞こうと思って、口を開きかければ、先にみどりが言った。
「男子と女子が交互に並ぶんよ」
「ふーん……」
「そうそうっ、親睦を深めるためなんだってー」
そう補足しながら、俺の左隣に入ってきたのは相澤で。
「あ、スミレちゃん!」
「みどちゃん、やっほー。柊くん、ここいい?」
「……別にいいけど」
「ふふ、照れなくてもいいんだよー?」
いや、適当に頷いただけなんですけど。
そう言おうかと迷っているうちに、生徒の輪は完成していく。
みどりは急に大人しくなって、ぼんやりと炎を見つめていた。
「一曲目、かけまーす」
そんな先生の声のあと、続いて流れ始めた音楽。
……あ、これ、聞いたことあるような。
曖昧な記憶の奥底を探り、そうだ、小学生のときの林間学校で踊った曲だ、と思い出す。
「みどり」
「んー?」
「これ、何ていう曲だっけ」
「マイムマイムやに。柊知っとんの?」
「うん、まあ」
マイムマイム。言われてみれば、そんな感じの曲名だった気がする。
一人で納得していると、不意に左手を握られた。