「そうなん?」

「さあ、知らないけど」


少なくとも、何にも入れずにってことはないだろう。そう推測しながら言ってみるけど、スイカを川で冷やすなんて初めてで。みどりもみどりで、これが普通だと思っていたらしく、首を傾げている。

結局、はっきりとした答えは分からなかった。


「まー、どんな方法でも、とりあえず冷えたらいいやろー」


適当なみどりの言葉に呆れたものの、確かにそうだと思い直す。

今までなら、さらに細かいことを気にしていたかもしれない。少し前の自分を思うと、俺も随分、この町の雰囲気に慣れてきたということだろうか。

ピシャッ、と水の跳ねる音がした。みどりが最後にもう一つ、石を並べたらしい。


「戻ろか!」

「ん」


頷くと、みどりは立ち上がる。

が、しかし。




「わっ!」



不意に掴まれた手首。


え、なに。

そう言う暇もなく、ぐんっと引っ張られ、体勢を崩していく。


嫌な予感しかしなかった。


まるで、そう。

五月の終わりの、あの日みたいに。

いきなり後ろからやって来た自転車に激突された、あの瞬間みたいに。



スローモーションで近付いてくる水面。

反射する木漏れ日。




バシャッ、と音がしたときには、すでに川の中だった。