「つーめーたーいー!」
「みど、セミの抜け殻たくさん見つけたほうが勝ちやからな! 今から三分間やでな!」
「……楽しいのか、あれ」
「楽しいんやろねー」
理解できない。完全に小学生の遊びだろう。
呆れつつも、みどりと達郎を眺める。対岸に渡った二人は、よーいどん、でそれぞれ違う方向に走り出した。
きらきら、きらきら。木々の隙間から漏れる光が、川の水を輝かせる。
さらさら、さらさら。絶えず流れている水は、静かな音を立てている。
心地好い単調なリズムと、程よい暖かさに、一気に睡魔がやって来て、瞼を下ろした。
由香は静かだし、睡眠を邪魔されることはないだろう。
そう思って、意識を手放そうとした。
なのに。
「せーのーでーはっ!」
「一個!」
「あたしも一個!」
「引き分けかー、しかも二人とも一個しか見つけられやんだとか、ウケるなー!」
「思ったより少なかったやんねー」
騒がしい声がこっちに向かって来ている気配がする。
ちょっと短すぎないか。三分間だったはずなのに。
「やっぱ見つからんものは見つからんなー」
「一分に短縮して良かったよねー」
……短縮、ああそうですか。