キャップを開けて口をつけると、味の濃すぎる麦茶が少しだけ飲めた。
「ずーるーいー」
そう言いながら手を伸ばしてくるみどりを無視して、もう一口飲もうと口をつける。
でも、まだ溶け出したばかりの麦茶は、あまり液体になっていない。
数滴出てきただけで、ペットボトルには大きく固まった氷が残った。
仕方なしに、そばにあった電柱にペットボトルを叩き付ける。
「ぎゃー! 何やっとんの!」
「見たら分かるだろ、氷割ってんだよ」
「それは分かるけども!」
「あー……、でもまだ割れてないから、もう一回」
「ストップストップストップ……!」
再びペットボトルの氷を割ろうと、電柱の前で構えたら、慌てたようにみどりが止めてきた。
「なに」
「だって柊さん、そんなんしたら電柱壊れるやん!」
「は? このくらいで壊れないだろ」
「だめだめだめだめ!」
頑なに首を横に振るみどり。眉間に皺を寄せて睨んでみたけど、決して頷くことはなく。やむを得ず、電柱で割ることは諦めた。
「じゃあ、どうやって割れって言うんだよ」
溜め息まじりにそう聞けば、みどりは無言で目を逸らす。他の方法が思い付かないのに止めてきたのか、こいつは。
みどりの無計画さに呆れながら、ヒビが入っただけの氷を見つめる。
溶けるまでお預けとか、一番つらい。何かいい方法がないだろうか。