自転車置き場は、屋根が一応ついているからそこまで日差しを感じないけど、吹く風は生温い。
「……柊さん」
「なに」
呑気なことを考えていたら、カゴから鞄を引き抜こうとするみどりに呼ばれた。
……どことなく嫌な予感がするのは、気のせいであってほしい。
でも、そういう予感というものは、たいてい当たるもので。
「鞄、抜けやん」
その言葉に、大きく溜め息を吐いた。
「ほんっとに有り得ない」
「うがっ」
結局、鞄がカゴから抜けたのは、自転車置き場に生徒の姿が見えなくなったころで。
荷台に取り付けたみどりのパンパンの鞄のせいで、二人乗りも出来ず。
それなら自分だけ乗って帰る、と叫んだみどりに、もう一発デコピンをくらわせようとしたら、自転車の後輪がパンクしていることに気が付いた。
そして、今に至る。
「なんでこの炎天下を歩いて帰ってるわけ?」
「パンクしてるからやわ」
「知ってるっつの」
「え、じゃあなんで聞いたん……」
暑い。
その一言に尽きる。