翌朝、地元の新聞をくまなくチェックした。
それらしい事件は、載っていなかった。
かつがれたのかという考えが一瞬浮かんで、消えた。
私と林太郎は、気絶させられた。
そこまでして人をだます、意味はない気がする。
おじさんは、戻ってこなかった。
埃の舞う倉庫で2時間くらい待った頃、おもむろに林太郎が、帰ろや、と立ちあがった。
「でも、おじさんが困るんじゃ」
「あの人は、ただ邪魔されたくなかっただけや。僕らが戻らんくて騒ぎになったら、ほれこそ困らせてまう」
言われてみれば、そうだ。
「鍵もかけてえん、おじさんは僕らがこうするの、わかってたと思う」
「戻ってこないつもりだった?」
林太郎は、少し首をかしげて、静かに言った。
「僕は、ほうは思わん」
私も思わない。
たぶん戻ってこられないような何かが、あったんだ。
おじさん、今どこで、何してるの。
大丈夫?
「ねえ、実咲(みさき)先輩が戻ってきてるんだって」
「え、なんで、仕事は?」
「それがさあ」
まあ噂なんだけど、と智弥子が顔を寄せてくる。
ジワジワと窓の外でセミが鳴く、火曜日。
「例の、サラリーマンの彼氏いたでしょ、その人が関係してるっぽいんだわ」
「一緒に戻ってきたのか、彼もこのへんの人だったよね」
「最新の情報では、その彼氏が入院したって話」
「えっ、看病のために帰ってきたってこと?」