それを使う使わないは別にして、選択の余地を持てるようになりたいと思う莉央である。
「先生お待たせしました」
うつむいた設楽に声をかけると、設楽は顔を上げ嬉しそうに莉央を見上げた。
「急に呼び出して悪かったですね。座りなさい」
莉央が座席に座ると、設楽はタブレットのケースを閉じて畳の上に置く。
「今日は顔色がいいようです。よかった」
「ありがとうございます」
「莉央の好きなものを出してもらうよう頼みましたから。たくさん食べなさい」
その優しい口調に、設楽の気遣いを感じる。
(先生は相変わらず優しい……。十年前と何も変わらない……。)