莉央も簡単に朝食を済ませ、高嶺の分と自分の分の洗濯物をまとめてマンションのクリーニングサービスに取りに来てもらう。

 軽く部屋を掃除したところで、莉央のスマホが鳴った。
 知らない携帯番号からの着信だ。


「はい、結城でございます」
『莉央? 設楽です』


 電話の向こうから聞こえてきたのは尊敬してやまない師の声だった。


「あっ、先生!」
『結城の家から送ってもらう手はずが整いました。来週にはアトリエに全て届く予定です』
「はい。ありがとうございます、先生」
『羽澄くんが私の話を聞いてとても喜んでくれましてね。届く前にいったん目を通した方がいいだろうと、デジカメで撮影した写真を送ってくれたのですよ』
「羽澄がそんなことを……?」

 莉央が十年で描いた画は百枚はくだらないはずだ。まとめて撮ったにしても、大変な手間だったに違いない。