一人残された莉央は首をひねりながら、言われた通りローテーブルの下の引き出しを引く。

 彼の言う通り、キーと分厚い封筒がそのまま入っていた。
 まさかと思いながら封筒の中を見ると札束である。


「お金……このまま置いてるの?」


 防犯もへったくれもない高嶺の感性を莉央は心底疑った。


「なんなの、これ……私のことを常識知らずだって言うけど、高嶺だってよっぽど常識ないじゃない。そうよ……食事だってシリアルだし……変な人……ふふっ」


 莉央はクスリと笑って、中から紙幣を五枚ほど取り、手帳に挟む。

 とりあえず高嶺の会社の人たちのために、まっとうな食事が必要だ。

 莉央はふと顔を上げて、二面の窓の外を見つめた。


(東京……なんて大きな街なんだろう。なんだか変なことになってしまったたけど、ここで私は生きていける? いや、生きていくんだ。形ばかりとはいえ夫と……設楽先生が私にチャンスをくれたんだもの。怖じけず精いっぱい頑張ってみよう……。)