部屋探しの難しさは今日十分思い知ったし、部屋が決まるまでホテル暮らしという贅沢は言語道断である。
だが戸籍上は夫とはいえ、高嶺は赤の他人で、どうしても好きになれない男だ。
一緒に住むとなると、それはそれで大変なストレスを抱え込むに違いない。
(そんなことになったら、筆が荒れる。良い画が描けなくなるかもしれない……。それだけは絶対に困る。)
まだ悩む莉央に、高嶺が少し声を落としてささやいた。
「俺は仕事で夜も遅いから……俺と顔をあわせることもほとんどない」
「……本当?」
顔を上げると、どこか物悲しげな光を宿した高嶺と目があった。
(あれ?)