「良かった……っ!」

 背が高い高嶺の腕の中にすっぽりと収まった莉央は、驚きで硬直する。

(良かったってなにが!?)


「いなくなったかと思った……帰ったのかと」


(もしかして心配してくれてる……?)


 心底心配したと言わんばかりの高嶺の声に、莉央は耳を疑ったが、今の莉央に高嶺がなにを考えているのかなどまったくわからなかった。


「帰るところは、ありません……」
と、答えるのが精一杯だった。


 もう京都には帰らない。それだけは確かだ。

 一人で生きるために頑張る。
 たとえうまくいかなくても、失敗ばかりでも、それが送り出してくれた人への答えになるはずだ。

「……莉央、そのことだが話がある」

 耳元で高嶺がささやく。

「え?」

 背中に回った高嶺の腕の力がゆるみ、離される。
 そして彼は改まった様子で莉央を見下ろした。


「莉央が落ち着くまで、俺と同居しないか?」