「……り、おっ……」



 突然、どこからか名前を呼ばれたような気がした。

 顔を上げなんとなく周囲を見回すと、駅の方から男が全速力で走ってくる姿が見える。

 街灯に照らし出された人影が徐々にあらわになって、莉央は飛び上がらんばかりに驚いた。

(あれは……高嶺!?)


「莉央!」


 高嶺だった。高嶺が莉央の名前を呼んでいる。
 なぜだろう。


「あ、あのっ……」


 莉央の思考がグルグルと回り始める。
 何を言っていいかわからない。

 とりあえずその場から立ち上がろうと腰を浮かせると、あっという間に駆け寄ってきた高嶺に、莉央は抱きすくめられていた。