(私は子供の頃から全く成長していない、本当に世間知らず……。誰でも知っているような当たり前のことを知らなくて、それなのに自立するんだと気持ちばかり先走って……。失敗したからって目の前にいる人に当たり散らして……恥ずかしい……。)


 脳裏に蘇るのは、コーヒーカップを持ったまま、ぽかんとしてた高嶺の顔である。

 思い出しただけで恥ずかしさのあまり消えてなくなりたくなる。

 彼の目に幼い自分はどんな風に映ったのだろうか。いや、考えるまでもなく、きっとどうしようもなく愚かに見えたに違いない。
 

(大人になりたい……。卑屈な自分を見たくない。でもどうしたらいいのかわからない。)

 じんわりと涙が浮かぶ涙を手の甲で拭う。

(これからどうしよう……。)

 途方にくれる莉央である。