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(大嫌いって、子供じゃあるまいし……。そもそも高嶺は、私に嫌われたってだから何?って思ってるに決まっているし……。)


 喫茶店を飛び出した莉央は、ストールで目から下をグルグルに巻いて泣き顔を隠し、あてもなくふらふらと歩いていたのだが、日が落ち寒さに負けて、結局マンションの前に戻ってきていた。

 二十四階の高嶺の部屋はあまりにも遠すぎて、明かりがついているかどうかもわからない。

 一階のフロントにいるマンションコンシェルジェに、高嶺が帰ってきているか聞けばいいのだが、その勇気が出てこないのだ。

 結局、すぐそばの生垣に腰を下ろして、ただひたすら自分の靴のつま先を眺めていた。