「お会いするそうです。最上階です。そちらのエレベーターをお使いください」
「ありがとう」
莉央は花のような笑顔を浮かべ、受付の横を通り、エレベーターへと向かう。
「あっ、お嬢さま!」
羽澄が慌てたように彼女の背中を追い、エレベーターのドアを開けた。
「最上階って言ってたわね。きっとずいぶん眺めがいいでしょうね」
「お嬢さま、煙となんとかは高いところが好きと言いますよ」
「羽澄、ダメよ。そんな言い方をしては」
「ですが羽澄は到底許せません……。あの男はお嬢さまを十年も……苦しめ続けました」
羽澄は悔しそうに唇をかみしめる。
「でもその十年で、私たちは生きてこれた。違う?」
「お嬢さまが、そうおっしゃるなら……」
不服そうではあるが、羽澄はこっくりとうなずいた。