愛想笑いを凍りつかせた青年は、高嶺と莉央を並んでカウンターの席に座らせる。そして慌てたように店の奥へと入っていった。
だが五分としないうちに申し訳なさそうに戻ってきた。
「申し訳ありません、お客様。ただ今他のお客様が内見中でございまして……」
「では現地で待つとしようか。たかがワンルームだ。すぐ終わるだろ」
資料を持ち立ち上がる高嶺に、青年は大きなバインダーを広げながら、カウンターの中から飛び出してくる。
「いやいやお客様、よろしければ他にもいい物件ありますから、よかったらそちらを見てください!」
「……無理そうだな。当然だが明日もキャンセルだ。莉央、行くぞ」
高嶺はため息をついた後、呆然としている莉央の方を抱いて不動産屋をあとにした。