高嶺は手を挙げてタクシーを止めると、莉央を押し込み自分も乗り込む。
 そして次に行こうとしていた不動産屋の住所を告げた。


「わざわざタクシーで行くの?」
「十分もかからないだろ」


 そしてタブレットを出すと、莉央の目にも留まらぬ速さで何かを打ち込んだ。


「何してるの?」
「この物件の内見申し込み」


 すると今度は高嶺のスマホに着信が入る。


「不動産屋からだ」
「えっ、もう!?」


 高嶺はそっと人差し指を自分の唇に押し当て、莉央に黙っているように告げた。


「はい。結城です。ええ。ホームページを見ました。内見できますか。できる? だったら現地集合がいいんですが……それは無理? わかりました。では明日にでも一度そちらに向かいます」