生まれて初めての東京である。確かに道案内がいてくれた方が助かる。だが高嶺と二人きりで歩くというのは気がひける。


「どうした。ヨユーなんじゃなかったか? 急に怖くなったのか」
「なっ……あなたって人はいちいちそうやって……」


 莉央の頭に血がのぼる。

【挑発して、相手のペースを崩す。】
 これが高嶺の手だとだんだんわかりかけていたはずなのに、負けず嫌いの莉央はすっくと立ち上がり、高嶺に向かって胸を張った。

「いいわ、道案内させてあげます」
「オッケー、莉央。じゃあ用意するからそこでいい子で待ってろよ」


 高嶺はにこりと笑って、機嫌よくバスルームへと向かう。


「何よいい子って。子ども扱いしないで!」


 その背中に憤ったが高嶺はどこ吹く風であった。