ほとんど使われていないアイランドキッチンにもたれ、高嶺はまた薄く笑う。
青墨色の瞳は好奇心でキラキラと輝いている。
その光から、莉央に引越しなど出来やしないと思っているのがヒシヒシと伝わってきた。
(なんなの、あの目! やっぱりバカにしてるわ!)
「おあいにく様。もう、ちゃんと候補は決めてきていますから。どれもちゃんとしたところだし、どこに決まってもいいんだから、すぐにここを出て行きます」
そしてバッグをポンポンと叩く。
バッグの中にはいくつかの物件をプリントアウトしたものが入っている。
これはきちんとパソコンで調べたもので(操作はもちろん羽澄がやったが、隣であれこれと指示を出したのは莉央である。)、莉央としてはこのうちのどこかに決まればよいのだ。
全くもって難しい話ではない。
「じゃあ俺もその部屋選びに付き合ってやる」
「は?」
「女一人で行くよりいいだろう。まぁ、俺は一切口出ししないから、道案内だと思えばいい」
「道案内……」