結局、体調が完全に戻ったと確信できたのは、翌々日のことだった。
朝、高嶺が起きる前にシャワーを浴び、身支度を整えた莉央は、ゲストルームから高嶺が起きてくると、
「ここを出て行く」
と、開口一番に告げた。
「今、なんて言った?」
寝癖で乱れた黒髪から鋭い眼差しがのぞく。
一瞬気圧された莉央だが、ひるむ意味がわからないと自分を奮い立たせる。
「出てきます。新しい部屋を借りるんです」
「もう部屋は決まってるのか」
「いえ、これから探します」
「なんだ……」
それまで恐ろしく不機嫌そうに莉央の話を聞いていた高嶺は、その言葉を聞いてクスリと笑う。
そしてそのままキッチンへ向かい、冷蔵庫から洗ったイチゴを取り出し、一つ口の中に放り込んだ。
(なんだかいまいち相手にされてない気がするのはどうしてだろう……。)
「どうして笑うの?」
「いや、時間がかかりそうだと思ってな」