納得したようなしていないようなそんな口調で、ようやく高嶺は莉央から手を離す。
「そ、それよりも、離婚届はまだですか……?」
つかまれた肩が熱い。
莉央は自分を抱きしめるようにして身を小さくし、問いかける。
「連絡はないな。もう少し待てよ。いきなりやってきたのはお前だろ? こっちにも準備が必要だ」
「……はい」
「それに、熱が下がったとはいえまだ本調子じゃない。医者は過労だと言っていた。調子に乗ったらまた倒れるぞ」
高嶺の言葉は至極真っ当で莉央を黙らせるほどの威力はあった。
彼の言う通り、ベッドから出て外出すればまた倒れそうな予感は自分でもわかっていた。
「まず体を治せ。そのことだけ考えろ」
高嶺は離婚届などどうでもいいと言わんばかりに体調のことばかり口にし、ベッドルームを出て行ってしまった。