------


「熱は?」
「下がりました。三十五度八分です」


 ベッドの上の莉央は、上半身を起こして体温計を見つめる。
 点滴を打ってもらってよく眠ったせいか、昨日の気分の悪さはかなり楽になっていた。


「は? 低すぎるだろ。壊れてないかそれ」


 だが、ベッドルームの入り口に腕を組んで立っていた高嶺は、怪訝そうな顔をして莉央に近づき、体温計をひったくるようにして数字を凝視する。


「壊れてませんよ。私、体温低いんです」
「これが平熱なのか」
「はい」
「信じられんな」


 高嶺は体温計をサイドボードの上に置くと、両手を伸ばし莉央の肩をつかみ、引き寄せた。