(本当に寝込みを襲うとは思わなかった。こいつのことを笑えんな。)

 高嶺は毛布をひっぱりあげて莉央の肩を覆った。何事もなかったかのように場を取り繕った。


(おそらくこれは気の迷いだが、看病の駄賃ということにしておこう……。だがあんな目で見られたら、たいていの男は勘違いする。)


 熱っぽく、心のすべてをさらけ出す、潤んだ瞳。人はあんな風に己をさらけ出すものではない。
 あれは他人に弱点を教えるのと同じだ。
 

 己の理性と知性を何よりも信じている高嶺は、あの目にはある意味ショックを受けていた。

 そっとベッドルームを出て、またソファーに腰を下ろす。

 白い月の代わりにもうすぐ朝日が昇ろうとしていた。