「……なんでいちいち外で顔突き合わせてメシを食わないといけないんだ……時間の無駄でしかないだろう」
苛立ちを抑えきれないのか、組んだ長い足のつま先が揺れている。
高嶺正智(たかみねまさとも)三十五歳。
つやのある漆黒の髪。まっすぐで凛々しい眉。黒目がちで目尻がすっと伸びた涼しげな目が特に印象的だ。
全体的に意思が強そうな、彫りの深い精悍な顔立ちである。
「もう一人天宮(あまみや)が居てくれたら助かるんだがな……クローンとか……どうにかならねぇかな」
一人であることの気安さからか、学生の頃のようなラフな言葉遣いで、親友でありなおかつ副社長である天宮の名を口にしていた。
人当たりの良い、血統書付きの洋猫のような副社長は、社長の代わりにほとんどの『会食』に出ている。最近は半分それが仕事のようなものだと本人も苦笑している。